川の堤防 山梨県 甲府盆地


河川の堤防は、人工的な草原ではありますが、草原性の蝶の良い生息地になっています。
 定期的に草刈りが行われるため、安定した草原の状態が維持されるのです。
  特に、ここ、山梨県の甲府盆地を流れる富士川の堤防には、ざっと思い浮かぶだけでも
   ヤマトシジミシルビアシジミベニシジミミヤマシジミツバメシジミモンキチョウ
    モンシロチョウキアゲハ、ヒメアカタテハ、イチモンジセセリ・・・と、
     10種類以上の蝶を見ることができます。

左から、ベニシジミ キアゲハ シルビアシジミ(訪れているのは食草のミヤコグサ)


交尾するシルビアシジミ。

その中で、シルビアシジミという蝶。この蝶は、1970年代までは、各地の河川の堤防や、 海岸沿いの自然草原などでよく見られたようですが、近年は、九州や南西諸島などを除いて、各地で生息地が 激減しています。
そのうち、河川の堤防での減少の原因は、機械による草刈りという説が有力ですが、そのプロセスはよく分かっていません。
この蝶の生息地で、草刈りが行われた後を訪れると、青々と茂っていた堤防の草が見事に五分狩り状態になり、 また、残った食草のミヤコグサ群落も枯れ草に覆われてしまっています。 そのため、草刈りが行われた場所では、しばらくの間この蝶を見ることができなくなります。 恐らく、規模の小さな生息地では、これだけで絶滅に追いやるに充分だったと思われます。
しかし、この地域では、かなり広範囲にわたってほぼ連続して食草が自生しているため、 短期間にすべての範囲が除草されることがなく、成虫がうまく移動することで、世代を重ねることが 可能になっているのではないでしょうか。また、草刈りの行われる間隔や時期が多年草である食草の生育にたまたま 合っていて、食草の減少を免れていると言う事もあるでしょう。
以上は私の単なる推測ですが、いずれにしても、この堤防を住処にしている蝶たちもさまざまな要因の 絶妙なバランスの上に、生きているのです。