SLあおなみ号 |
あおなみ線の「SL実験走行」は、あおなみ線の利用促進と名古屋の情報発信を目的として行われました。この路線は、平成16年10月6日に全線開通しましたが、近年は利用者が少なく、活性化のPRも兼ねてのイベントでした。 あおなみ線の沿線となる名古屋西南部地域は、これまで鉄道サービスが不十分で、自動車やバスなどの路面交通により移動せざるを得ず、交通渋滞が著しい地域でした。平成4年1月の運輸政策審議会答申第12号において、名古屋から笹島、稲永を経由して金城ふ頭に至る路線として、第三セクター方式を活用して整備すべきものとの答申がなされ、その早期実現を図るべく、名古屋市、愛知県、名古屋港管理組合、日本政策投資銀行、そして東海旅客鉄道株式会社をはじめとする民間企業各社の出資により第三セクターである名古屋臨海高速鉄道株式会社が平成9年12月2日に設立されました。 |
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河村市長とOS☆U(あおなみ線隊24)のメンバー。 |
名古屋の街に、27年ぶりに運行する蒸気機関車(1939(昭和14年)のSL、C56型160号機)の実験走行を前に得意満面の河村市長は饒舌でした。 河村市長は出発式で「輝かしい出発進行。面白い名古屋へ第一歩を踏み出せた」「不退転の決意で、名古屋の決定的名所として育てて行く」とも話した。この後、先頭車両に乗った河村市長は「世界から鉄道ファンが集まるようになればええ。住んでいる人のプライドに成る街をつくる輝かしい第一歩」と得意の名古屋弁で話した。このSLは名古屋駅と名古屋貨物ターミナル駅の5km区間を16,17日間で6往復します。試験走行に乗車出来る人員の1,200人が抽選で選ばれましたが、倍率は100倍に達しました。抽選に外れたSLファンには、混乱を避ける為沿線2カ所に観覧場所を設置し、あおなみ線の沿線からもカメラを構えていた。二日間での人出は4万3440人と市の予想の5万4000人よりは下回りましたが、名古屋市街を走るSLの昔懐かしい雄姿に大歓迎でした。 |
16日、午前9時50分、名古屋駅を出発した。 |
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実験走行には、車両や機関士などをJR西日本から借りる事が出来ました。観光の繁忙期なら、前後の予備期間を入れると相当の日数に成るので、簡単には実行出来なかったと思える。河村市長はSLの定期運行に関して、市職員で特別チームをつくり、国内で保存されている車両を修復したり、海外から調達する考えも有ると言う。実験走行だけの費用は4千万円を要し、多額の税金の投入に疑問視する市職員もいる。この費用を乗客1人当たの運賃に単純計算すると3万3300円余りとなります。今回の運賃は大人一人500円でした。 SL構想のもともとの発想は、市と愛知県が財政支援する第3セクター・名古屋臨海高速鉄道の経営再建につなげる狙いが有るのです。この構想実現の為の試運転でした。市は、実験走行で得られたデータから、定期運行の具体策を検討するが、課題は山積している。 あおなみ線の沿線には住宅が立ち並び、煙や騒音に反対する住民は多い。SLの魅力は激しく噴き出される蒸気や、燃えカスを含んだ白い煙、甲高い警笛と重量感のある走行音、それら全てが公害となり、線路に隣接するマンション等の住民からは、スス等で窓は開けられず、洗濯物が汚れる、との苦情もある。 静岡県でSLを運行する大井川鉄道の広報は、「ゼロからのスタートも、税金での運行も無謀ではないか?」と疑問視している。大井鉄道は12年前、個人所有のSLを購入する際、修理と運送に5千500万円を投じ、経験が必要な機関士の養成にも時間とコストがかかった。その人材養成に手間暇かけ自前で育てた技師を簡単に貸す会社は無いだろうと推察している。 |
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![]() 観覧場所のカメラマン。 倍率百倍の厳しい乗車選考に落選した残念な方が、写真だけでも撮ろうと集まったかも知れません。 |
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名古屋市があをなみ線で16日行ったSLの実験走行で新旧の共演が有った。その出来事は午前11時39分でした。昭和の高度成長時代にに大量輸送を担った蒸気機関車と、高速大量輸送の平成のエースである新幹線が並走した。 SLは白煙を纏いながら ゆっくりと坂を力強く駆け上がる。その後方を流線形のN700系の新幹線が、武骨な動きとは対照的に滑るが如くスムーズに減速し名古屋駅に入って行った。 アンバランスさに時代のギャップを感じ、技術の進歩に日本の力を感じます。 |
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鉄道員の姿で旗を振る河村市長。 |
SL定期運行の課題。 河村名古屋市長がSLの2日間に渡る実験走行が修了した18日の定例記者会見で、定期運行に関する課題を整理する為、県庁にプロジェクトチームをを設置する考えを明らかにした。ここでも「不退転の決意で、名古屋の決定的名所として育てて行く」と断固とした決意を表明した。そして「本物ナゴヤ」の輝かしい第一歩に成ったのではないか。SLも本物、名古屋城本丸御殿も400年前に建てた時の図面が有り、本物に復元出来る。それに名古屋には航空宇宙産業があり船が有り、新幹線に在来線、これにリニアも加わる。これだけそろうのは世界に名古屋しかなく、「世界の鉄道の聖地ナゴヤ」というよりも「乗り物の聖地」という流れで考えたい。SLの定期運行にには環境問題など近隣の理解が不可欠である。近隣の住民の方とは丁寧に会話を繰り返し理解をいただいてゆく。データ検証して、どう今後につなげるか、庁内にプロジェクトチームをつくろうと指示した。名古屋に行けばSLに乗れるという雰囲気にしたいと語った。 反面、定期運行の見通しを「車両や人材確保、排煙、騒音対策など多くの課題が有り、非常に難しい」との意見もある。市民からの意見としては、「子供が喜ぶし、年に1回程度のイベントなら歓迎もするが、市が税金を使って定期的に走行させるには疑問だ」との声もある。 実験走行した3日後の20日、河村市長の「鉄道の聖地」構想の予算は計上されませんでした。今後どのような展開で決着するのでしょうか?。 |
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