Robert Lusser
最近のMe109の解説書にRobert Lusserが紹介されていたので
少し調べました。
彼は1899年生まれで当初、Hans Klemmと組んでL25を設計し、またこの頃
からHeinkel社とも関係を持っていました。
1933年にMesserschmitt社に移ってからが彼の真の活躍の始まりで、
M37、Bf108、109、の設計に関与し、Bf110、世界速度記録を出したMe209
、Me262で主任設計者を務め、いずれも成功作となっています。
Me262の場合、ジェットエンジンの設計者であるHans-Joachim Pabst
von Ohainから情報を得ながら設計を開始しましたが、1939年6月1日に
彼がHeinkelに引き抜かれた以降は、Waldemar Voight が設計を完成させ
ました。
彼がHeinkel社に移った直後の1939年8月27日に世界最初のジェット機で
あるHe178が初飛行し、Heinkel社は同年秋から、Lusserを主任設計者として、
最初のジェット戦闘機として後に初飛行するHe280の開発に取り掛かります
。勿論Ernest Heinkelは分かっていて呼び戻したのでしょうが、ライバル
関係となったMe262とHe280の双方に彼の手が入っているのは大したものです。
また1940年8月に、He219の前身となる、双子エンジンを装備した多用途機
p1055のアイディアを出しますが、1941年にT.A.は量産に向かないとして
一旦p1055を拒否し、Heinkelはこれに怒って1941年8月にLusserを解雇し
ます。確かにHe280とHe219は翼平面形が良く似ています。
ここでも面白いことに、He219計画が停滞して自身の旧作であるBf110の注文
が増える関係が生じました。
しかしLusserという人にとってこんな事は何でもなくて、今度はFieseler社
とジェットエンジンの開発を進める契約を結び、Fi103（つまりV1ですね）
の構想を固め、Argus社のvon Gosslauと協力して、戦力化に成功します。
彼は大戦末期にはPeenemundeで Wernher von Braunのチームに加わって
いました。
Fi103に携わった期間の彼の功績の一つに複雑系に対する信頼性の定式化
があり、彼が考案した数式はLusserの式として知られています。
簡単に言うと、多くの要素が順に動作する直列系と呼ばれる機構の信頼度
は、各要素の個別信頼度の掛け算になると言うものです。
彼は最初の妻Hildegardを1945年3月13日の空襲で失いますが、その後再婚し
、1949年に渡米します。米海軍やジェット推進研究所で勤務した後、1953
年からHuntsvilleでvon Braunと共にRedstoneロケットの開発を行いました。
1959年に西ドイツに戻り、Messerschmitt-Boelkow社に勤務しますが、そこで
自身の信頼性理論に基づきF104Gの事故多発を予言しました。
1967年以降はスキーのbindingの開発を行い、自身の発明をスイスの企業に
売りますが、1969年の彼の死去により、大量生産されませんでした。
彼の存在によって航空史が変ったと言って良い程の大きな存在であり、
企業を超越していて、経営者との不和程度ではたじろぎませんでした。
能力と自信に満ちた技術者で写真からも気迫に溢れた面構えです。
実用性の高いBf110やFi103を開発した点から見て、卓越したアイディアと
プロジェクトの成功に必要な高い常識性を兼ね備えていた所が
特に優れていたのでは無いでしょうか。
参考
http://encyclopedia.laborlawtalk.com/Robert_Lusser
http://infos.aus-germanien.de/Robert_Lusser
お気づきの点があったらご連絡下さい（直）。
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