ギフチョウ Luehdorfia japonica

この蝶は、おそらく日本の蝶のなかでもっとも有名な蝶ではないでしょうか。 1年に一度、春の短い時期にだけ見られる印象的な蝶です。 春の明るく暖かな雑木林を飛翔する姿は、何度見てもいいものです。

日本の特産種で、中国 近畿 東海 北陸 と東北地方の日本海側に生息しています。
世間で言われているほど、珍しい種類ではありません。
年1回桜の咲く頃、スミレやカタクリなどの咲き始めた雑木林に現れます。

飛んでいる姿は、ちょうど同じアゲハチョウ科のアゲハやキアゲハをすこし優しくしたような感じで、 特に春型のキアゲハにはよくはっとさせられます。 アゲハチョウも町中ではなく春の雑木林などを飛んでいたらもっと印象が違っていたでしょう。

私の住む愛知県では、小牧市 春日井市 瀬戸市 日進市などから東の低山地帯に広く分布 するようです。以前には、それより西の名古屋市などでもよく採集された ようですが今ではほとんど見られません。

新聞などではお馴染みのチョウですが この蝶の飛んでいる姿を実際に見たという人は少ないでしょう。 しかし、以外に身近な所を住処にしています。
まずは、あまり込み合っていない明るく開けた雑木林、中でも小さな窪地や沢沿いが一般に適しています。 食草のカンアオイがそういった場所を好むためです。
春先は天候が不順で晴れていても急に寒くなることがありますが、そういう時に出かけてもまず見られません。 夏の蝶と違い晴れて暖かいときでないと出てきません。
時期は、現地の桜が満開のころに行けば間違いありません。 ギフチョウは、ショウジョウバカマ、スミレ、つつじ類など紫系統の花に好んで吸蜜に訪れるので 食草の群生地近くにそういった花があれば見られるでしょう。

他の人間以外の生物の例に漏れず、この蝶の生息地も年々つぶれていっているのは確かです。 東海地方でも、ギフチョウの舞う雑木林が、ゴルフ場や宅地開発により改変され、ずいぶんたくさんの生息地が失われてしまいました。


Apr.2003 愛知県 瀬戸市
アセビの花を訪れた雄。


Apr.2003 愛知県 藤岡町
陽光溢れる春の雑木林で。


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